※死にネタです。
カツン、と靴音が高い天井に響き渡った。
先のブリタニア皇帝が非道なるテロリスト…ゼロによって殺されたのは、つい先日のことだった。
軍に仕え、准尉として戦地へと赴いていたスザクは、ギュッと拳を握り締める。
突如現れて、一瞬のうちにブリタニア帝国を崩壊に導いた男、ゼロ。
マスコミが追いかけまわしていたにも関わらず、その正体は依然として知れなかった。
…こうして、玉座に着き、国を統治する立場となった今となっても、その顔は仮面に覆われ、身体は裾の長いマントで隠されていた。
彼の所為で一体どれだけの人が死んでいったことだろう。
ゼロは言った。
強い者が弱い者を一方的に虐げることは罪だと。
では弱い者が強い者の命を奪うことは正義か?
……罪人だからといって、命を奪ってもいいのだろうか。
彼は言った。変えたいから壊すのだと。
けれど、力でねじ伏せて、果たして物事が変わるのだろうか。
見えぬところで腐食を繰り返すだけではないのか。
変えたいのならば、内部からゆっくりと、しかし確実に正常なものへと変えていくことが必要なのではないのか。
壊すために、犠牲となったものの大きさ。
それは計り知れなかった。
スザクは懐に抱いたものをギュッと握り締める。
脳裏にかすめるのは、以前、自分に優しくしてくれた人々の死。
彼らが果たして、強者であったのだろうか。
そもそも強者とはなんだ?
だれがそれを判別する?
…全てがゼロの独断ではないか。
多くの民を失い、ようやく国家として成り立ち始めたこの国。
けれど、ゼロがいるかぎり、争いはまた引き起こされる。
そして犠牲者は絶えることなく生まれ、悲劇が繰り返される。
(だから、僕は…)
(コイツを…ゼロを殺す…)
一介の准尉にしか過ぎなかった自分が、突然に王の間へと呼び出されたときには、驚いたが、考えてみればいいチャンスだった。
目の前の玉座で足を組んでいるゼロを睨みつける。
すると、ゼロが片手で指示をし、スザクの傍に付き添っていた護衛を下がらせた。
これで、ゼロとスザク。二人きり。
静かににらみ合う二人。
その沈黙を破ったのはスザクだった。
胸にひそませていたナイフの刀身を引き抜き、ゼロへと飛び掛ったのだ。
「ゼロォオオオオッ!」
宙できらめく銀刀。
しかし、当然抵抗すると思われたゼロはそのまま、スザクの刃を胸に迎え入れていて。
「…っなんで…!」
次から次にあふれ出てくる赤い血。
その赤さは、自分や…他の人間の血液とまったく同じ色で、スザクは突き刺したナイフの柄を握り締めたまま、震えだす。
そんなスザクの身体をゼロは震える手で引き寄せた。
「これでいいんだ…有難う」
耳元で聞こえたゼロの声。
その声に、スザクの身体は一瞬にして凍りついた。
少し鼻にかかったような、少年の声。
ゼロの姿が見えない今、その声は、自分のよく知る人間のそれと重なった。
そんなわけはない、聞き間違えだと理性が叫ぶ声が聞こえる。
けれど。
「…やっぱりお前はバカだな…泣く…必要がどこにある…」
「…っ!そんな…」
震える手でゼロのマスクを奪い取る。
仮面の下から現れる乱れた黒髪。
冷たい光を宿した紫の瞳。
それは、よく見知った人間のもので。
「ルル、ーシュ…」
まさか、だとか、そんな、だとか。
……信じられなかった。
「やぁ、スザ、ク。」
目の前の彼はいつもと同じように笑う。
学校でであったときのように、気軽な口調で。
まるで世間話でも始めるかのように。
「なんで、こんな…」
「俺には…も…う何も……残って、いな…いから…」
目を閉じ、ルルーシュはフッと唇に笑みを浮かべた。
冷たい自分の心の中に唯一宿った光…ナナリー。
それはもう失われてしまった。
浅はかな行動に走った自分を庇って。
彼女にも光を与えてやりたかった。
いや、もっと幸せになれるはずの存在だったのだ。
それを、自分が壊した。
「…俺には何も護るものが…愛…せるものが……ない…」
どんどんと、ゆっくりになっていくルルーシュの言葉に、スザクは背筋を冷たいものが通り過ぎたのを感じた。
「ルルーシュ!」
こちら側に繋ぎとめようと、強く肩を抱いたけれど。
「さよなら、だ。スザク」
胸に刺さっていたナイフ。
それをルルーシュはゆっくりと己の手で掴むと。
「ルルーシュ!」
一気に自らの胸の奥…突き抜けるほど深く刃を押し込んだ。
止めることもできず、叫ぶスザク。
そんなスザクの腕の中で、ルルーシュは、淡く微笑みながら目を閉じたのだった。
…こんなエンディングだったら嫌だな…とおもって、書きなぐったブツです;
あまりに突発的で小説といえるかどうか…いやはや:
このお話しの中で、ルルが王座についたのは、C.C.の望みが、「ルルーシュが王となって国を統べること」
だったから。
そして、スザクは最後まで片思い設定;
ナナリーはルルを庇って死んでます。
あと、セシルとロイドあたりも死んでしまいそう涙